消費者信用産業の業態
消費者信用産業の定義
クレジットカードやショッピングクレジット等の販売信用及び消費者ローンを取り扱う産業分野を消費者信用産業と言います。一般に消費者個人の信用を基に(「消費者の信用を担保に」との表現も使われます)必要な金銭的サービスを提供する産業です。具体的業種としては、クレジットカード会社や信販会社、メーカー系割賦会社、消費者金融(専業)会社、割賦百貨店及び小売店のクレジット販売部門などが含まれます。つまり、消費者信用とは、「販売信用」である商品の購入やサービスの提供を受ける際に、先に商品やサービスを受け取り、代金の支払いは一定期間繰り延べることができるシステムと「消費者金融」と呼ばれる無担保・無保証で貸付を行なう金融機関周辺業務であると言えます。
消費者信用産業と金融機関の違い
銀行等の金融機関もクレジットカードの発行やカードローンの他証書貸付等リテール部門を取り扱ってあり消費者信用産業の一端を担っていると言えますが、本業はあくまで銀行・保険業でクレジットカードの発行やカードローン等のリテール部門は付帯的で消費者信用産業に属するとは言えません。
信販会社やクレジットカード会社が割賦販売法に定義され同法の規制や制限を受け、消費者金融専業者が貸金業法に定義され同じく同法の規制や制限を受けるのに対して、銀行や保険会社はそれぞれ銀行法、信用金庫法及び保険業法に定義されています。
そのため、同じ消費者に対する貸付でも貸金業者が総量規制で貸付制限を受けたり、安定した収入の無い主婦には貸付できないのに対して、貸金業法の規制を受けない金融機関では貸付が可能な場合があります。
成長する消費者信用産業
拡大するクレジットカード業界
日本の消費者信用市場は戦後の国民経済の成長に伴い、著しい成長を遂げています。昭和50年代以降にクレジットカードが普及し始めた頃から、異業種参入が相次ぎ現在ではスマートフォン等を使用した決済手段も含めて手軽で多様化しています。
2022年のデータによるとクレジットカードの発行枚数は、日本のクレジットカード発行枚数は3億101万枚で、一人当たりの平均保有枚数は2.9枚となっています。ただし、銀行、クレジットカード会社、信販会社、消費者金融専業者ごと及び各発行会社ごとの詳細な発行枚数については、公開されている最新のデータの根拠、正確性を確認する必要があります。各社の発行枚数には非有効会員を含むケースもあり、発行会社によっては2~3割以上が非有功会員、つまり契約解除・停止会員の可能性も十分あります。
消費者信用産業の内最も市場規模の多きいクレジットカードのショッピング利用額は、日本クレジット協会によれば2023年は105兆7272億円になったと言われています。また、データは1年遡りますが経済産業省の資料によれば、2022年の民間消費支出に対するキャッシュレス決済比率は36.0%(111兆円)となりました。その内訳は、クレジットカードが30.4%(93.8兆円)、デビットカードが1.0%(3.2兆円)、電子マネーが2.0%(6.1兆円)、コード決済が2.6%(7.9兆円)となっています。さらに市場は成長しており2023年もしくは2024年にはキャッシュレス決済比率は40%を超えるものと思われます。2022年から2023年に掛けての電子マネーへのマイナポイントの付与に伴い若年層に限らず中高年世代へもキャシュレス化が急速に進んでおり市場拡大スピードは一層進むものと思われます。
停滞期を脱する消費者金融業界
金融庁によると貸付残高の減少が続いていた消費者向け貸付は、2015年3月末にはピーク時の2006年3月末の約3分の位1の水準にまで落ち込んだが、2022年3月末の消費者向け貸付残高は前年度比1.1%増の7兆1720億円と減少に歯止めが掛かり、再び増加に転じる可能性も窺われる。
過払金請求で長期低迷
改正貸金業法の施行及び最高裁判所の判例に基づく解釈の変更により、高金利時代に借主が払いすぎた過払利息の返還請求によって消費者金融事業者全体で数兆円の返金を迫られたと言われており経営状況は急速に悪化しました。特に、2006年以降過払金返還請求を得意とする消費者系中でもクレサラ系弁護士や認定司法書士の広告宣伝と社会への認知度の高まりから急速に過払金の返還請求(又は不当利得返還請求)が増加しました。
顧客の破産や債務整理で不良債権化
また、同時に破産や債務整理の申立ても増加し消費者金融専業者の経営を圧迫し、業界最大手だった武富士が2010年9月末に会社更生法の適用を申請するに至りました。武富士の突然の破綻の影響は、その後同様に他の消費者金融専業者から借り入れていた借主にそれぞれの貸付事業者に過払い金の返還請求を急がせることになり過払金返還請求に拍車を掛けました。
武富士は2011年10月に会社更生計画案の認可を受けました。2012年3月にはJトラストが武富士を傘下に収め、4月にはTFJ株式会社に社名変更し、消費者金融事業を継続している。武富士の負債総額は1兆5000億円に及び、他の大手消費者金融専業者略同程度の過払金債務を抱えていたといわれています。
消費者金融業界最大手は三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社であるアコム、次いで三井住友銀行が完全子会社化したアコム(SMBCコンシューマーファイナンス)が続きます。このメガバンク傘下の2社で消費者金融専業界におけるシェアは6割にも及び市場は寡占化が進み2強の時代です。
規制強化以降、上記2社にアイフルを含めた大手3社は慢性的に赤字が続き、グループのメガバンクが数千億円規模の金融支援を行うなど経営の立て直しを図ってきました。ここにきて、過払い金請求問題が一段落。景気回復に伴う個人の借り入れ需要回復もあり、近年は営業収益が改善しています。