平均残高法概要
平均残高法の利用方法
平均残高法は、主に銀行の資金量の目安になる預金残高を月末残高(末残)から平均残高(平残)に移行する動きの中で活用されるようになってきました。以前は、銀行の渉外担当者が月末近くになると取引企業を回り、「5,000円、1万円でも・・・」と預金を求めて駆けずり回っていたものですが、平均残高で預金残高を表示するようになってからは銀行員の企業回りも見られなくなりました。
平均残高法は、預金残高の計算だけでなく当座貸越契約タイプのカードローンの利息計算ても利用されていますが、この場合、積数(残高×日数)を用いて計算する方法が専らです。ノンバンクでの利息計算は、銀行系のシステムを採用しているところは別として、期間利息の和で約定日までの利息を計算しています。
※積数については、残高×日数が一般的ですが、銀行によっては、残高×日数×万分率(パーミリアド)を積数として計算し、金利計算するときに10,000で除しているところもあります。
この平均残高は、預金の平均残高や預金の金利を求めるときに活用するだけでなく、実質金利の計算にも活用することが出来ます。そして平均残高から実質金利を計算する平均残高法は、貸金業法や割賦販売法に定められた実質金利の計算方法にも沿った計算式と言えます。
下記の例を基に平均残高から実質金利を求めてみます。下記の例は、現在では略あり得ないか極めて少ない貸付方法だと思われますが、バブル期には、一部のノンバンクで株式購入ローンやゴルフ会員権担保ローン等の有価証券担保ローンとして広く利用されていました。担保価値の変動が激しく、また担保物件の名義変更に必要な印鑑証明の有効期間の関係から3ヶ月以内の短期融資がメインであったため頻繁に書換(切替)融資を行う一方、一般に長期プライムレート連動型の貸付であったため、書換の度に貸付金利が変わるということが発生致しました。下記の例えの様に貸付金額が融資の都度変化するということは比較的珍しく、一般には追加担保を要求4することで対応していましたので、貸付金額は株の追加購入や株の売却が無い限りは発生しませんでしたので、下記の例は極端かもしれません。
実質金利算定に於ける平均残高法の考え方
下記の例は平均残高の基本的な考え方を理解するのに有効です。
貸付条件
例は、基本取引約定書を基本契約として継続的に金銭消費貸借契約を合計4回締結したもので、それぞれの条件は以下の通りです。
新しい貸付は、古い貸付の返済日と同一で貸付期間は重複しないものとします。また、貸付日数は1ヶ月単位になっていますが、1ヶ月単位である必要は有りません。
平均残高算出の考え方
図は、上記の貸付内容のイメージです。それぞれ貸付期間、貸付金額、貸付利率の異なる連続した貸付と、それらを平均化した状態を表しています。4回の期限一括返済の貸付を1回の期限一括返済の貸付と見なして利息総額と元金の平均残高の割合を1年間に換算して実質金利を求めます。
実質金利の算出
実際に平均残高法で実質金利を求めてみます。
右の「当初貸付内容」の図は、上記貸付条件の契約通りの利率に基づく利息、元利充当内容を表示しています。
ここで、積数とは元金と日数の積で求めます。
最初の令和5年1月27日の貸付の場合、元金 100,000円×日数 31日の積3,10
0,000が積数です。同様に計算した積数の合計84,900,000を延べ貸付期間で除することで平均残高279,276円が求められます。
つまり、279,276円を304日間借り入れていたことになります。そして、その期間の利息が56,417円ですから、
1日当たりの利息が 279,276円÷304日間で185円58銭
1日当たりの利率(日利)は 185.58円÷279,276=0.06645%
年利換算で 0.06645×365=24.26%(切上げ)
となり、算定した実質年利(金利)は24.26%となります。
実質金利の検証と修正
次に、「算定実質金利で引き直し充当計算内容」の表の通り検算を兼ねて計算を行ったところ最終返済欄の残元金が-206円となり誤差が生じたことから実質金利とは言えない。
残元金が「0」になるように利息を最終回に上乗せして実質金利を再計算(計算表は省略)すると、修正実質金利は、24.35%となります。
これは、残元金が「0」にならなければ実質金利にならないため、206円は利息である、とする必要が有るためです。
実質金利の確定
金利24.35%で引き直し計算を再度行ったところ下の表になります。
それでも、14円の差額が発生いたします。最終的に修正した実質金利は24.344%になりました。実質金利の表示において、小数点第三位以下は必要でなく、また、切り下げて低く表示するのは問題があるので切り上げて24.35%と確定いたします。