平均残高法と二分法を併用して正確な実質金利を求める方法

困難な実質金利の算定と表示

貸付条件表記載の金利(表面金利)は実質金利を年率で表示することになっていますので、この金利で引き直し計算すると最終返済後には元利金残高はゼロになるはずです。ところが、分割払いの場合は必ず最終返済後に過不足金が発生しますのでそもそも金利が違っていることになります。つまり、貸付条件表記載の表面金利は貸付の真の実質金利では無い、といえます。

 

原因は、貸付条件表記載の利率は単に実質月利の12倍で計算しているに過ぎないこと、また、1ヶ月と言っても大の月であったり小の月であったりと日数が違うのに全く加味していないことによります。例として、100,000円を月利1.2%(年利14.4%)の1回払いとして貸付した場合で計算をしてみます。大の月(1ヶ月31日)の実質金利は14.13%、小の月(1ヶ月30日)は14.6%となりますが、貸付条件表上は月利1.2%×12ヶ月で14.4%です。分かり易く説明するために1回払いを参考にしましたが分割払いでも同じです。

 

なお、貸金の場合は月利残債方式で月払い分と半年賦払いは別々に計算し、半年賦払い月に合計する方法ですので、まだ貸付日による金利の乖離は少ないです。しかし、クレジットの場合は、利率(実質月利)から指数を算出して手数料を求め元金と合計した金額を基に月払い金額を決定します。この時にボーナス払月を初月にするか6ヶ月目にするかで実質金利は大きく変わってきます。初回のボーナス払月までの期間が短いほど表面金利と実質金利の乖離は大きくなります。例えば表面金利10.9%、支払回数12回払い、ボーナス払い金額は総額の50%で計算すると、1ヶ月めにボーナス払月の場合は実質金利13.41%、ボーナス払い月が6ヶ月目の場合は、9.18%になります。これだけ差が出るのに、実質金利は同じ10.9%と表示するのは問題です。

 

貸金業法及び割賦販売法が定めている実質金利の表示は「少なくとも小数点第一位」となっていますので、実際の貸付の実質金利が表面金利より小数点第一位の数字に影響を及ぼすほど乖離するのは問題です。しかし、実態としては、いくら乖離していても貸付条件表やクレジット契約書に記載されている実質金利(=表面金利)は、実は月利残債方式で計算されたもので貸付日や半年賦払いの有無により実質金利が大きく変わるのは加味されていないのが実情です。これは、契約毎に実質金利の計算を行うことが実務的でないこと、もしくは、表面金利で日割計算する重要性を認識されていないためと考えられます。

 

現在、元金や月払い金額から実質金利を求めることは解析的に解を得られませんので、今回は収束法(ニュートン法や二分法)によって正確な実質金利を求めたいと思いますが、収束法だけでは解を求めるのに度重なる計算が伴いますので、平均残高法で実質金利の近似値を求めその値を基準に二分法を応用して求める方法を提示します。

正確な実質金利の算出の考え方

実質金利算定の第一段階は、別ページで説明した平均残高法によりますが、利息の計算は日割りの残債方式です。その方法は、当初の月毎の元利金に基づき積数を求め暫定の実質金利を求めます。

 

次に、暫定実質金利を基に引き直し計算を行います。
引き直し計算の結果、最終支払回後に元利金にプラス・マイナス(過不足)が生じたら、暫定実質金利に0.01%を上乗せして(数値によっては0.01%減じる)再度引き直し計算を行います。プラス・マイナスが数円の場合は、暫定実質金利=確定実質金利として決定します。

 

第二段階として、暫定実質金利と暫定実質金利に0.01%上乗せした利率で引き直し計算を行い最終回の過不足金から、比例按分して実質金利を確定する方法で二分法の応用です。確認のため確定実質金利で引き直し計算を行い検証すると過不足金は数円に収まると思います。支払回数が長くなれば誤差も出てきますので数十円程度の過不足が出る可能性はあります。
順を追って説明していきます。

確定実質金利の算定方法

暫定実質金利の算出

今回の検証の貸付(借入)条件は以下の通りです。ページをご覧の方にも検証が出来るように実際のシートをコピーし、計算式も必要な部分を示しました。
なお、返済パターンは、クレジットの場合を例に検証しましたので一般的な証書貸付とは月払金額及び元利金の内訳で相違していますが、計算手順は全く同じです。

    • 貸付日       2025年1月27日
    • 貸付金額      金 1,000,000円
    • 貸付利率(表面金利) 年率 7.5%
    • 支払回数      36回
    • 月払金額の計算方法
      クレジットと同様に、元利金の合計を支払回数で除して100円未満を切捨て2回目以降の支払金額とし、切捨てた分は初回の分割金に上乗せします。
    • 元利金の内訳
      七八分法によりまず利息を計算し、その後月払金額から利息を減じて元金返済額を求めます。

貸付(借入)条件の入力

上記貸付条件を入力して返済予定表に反映させます。入力項目及び方法は次の通りです。
ご覧頂いた方が自分で表を作成し検証出来るように計算方式及び考え方についても記載します。
記号等は、エクセル関数の表記をそのまま使用する場合があります。
実質金利計算用融資条件入力項目図

➊➋❸❹➒➓の欄を入力します。
❺➏➐➑⓫欄は、自動で計算されます。計算式は下記に表示します。
には、確定実質金利が自動で表示されます。

の計算式

=元金*(1+指数)
元金;貸付額(借入額)
指数;の計算式で得られた値

の計算式

=IF(表面金利=” “,” “,ROUNDDOWN((表面金利/12*(表面金利/12+1)^支払回数/((表面金利/12+1)^支払回数-1))*支払回数-1,4))
表面金利;みなし利息が無い場合は、月利残債方式においては実質金利と同じですが、ここでは正確な実質金利を求めるため区別する必要が有り月利残債方式による金利を表面金利と表現します。

の計算式

=支払総額-(2回目以降支払額*(支払回数-1)+ボーナス払い額*ボーナス払回数)
ボーナス払い額;クレジットの場合は、支払金額から任意の金額をボーナス払い額に出来ますが、住宅ローンを含む証書貸付の場合は、分割払いとして貸付金の内○〇万円、ボーナス払い(半年賦払い)分として○〇万として別々に支払金を計算して求められた金額を合算致します。

の計算式

=ROUNDDOWN((支払総額-ボーナス払い額×ボーナス払回数)÷支払回数,-2)

   最後の-2は、百円単位で表示し、百円未満は切り捨てにします。

元利充当計算と暫定実質金利の算出

下表の数字の列に予めエクセル関数の計算式を挿入し列の最下行で暫定実質金利を計算いたします。

実質金利計算用充当計算シート

入力する項目は無く、全て予め設定したエクセル関数で自動計算されます。各列の計算式は以下の通りです。

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