弁護士事務所等の過払金5分診断は本当か
クレジットカードのキャッシングやカードローンを利用している場合、借入からどの位でいくらの過払金が発生しているのか試算してみます。債務整理や過払金専門の弁護士事務所あるいは認定司法書士事務所の広告で「無料 過払金5分診断」と宣伝しているのを見たことがあると思いますが、正確な過払金は、引き直し計算、すなわち利息制限法所定の制限利率で再計算することを行わないと出来ません。
しかし、パターン化することで目安程度ならば簡単に試算することが出来ます。わざわざ、弁護士事務所や認定司法書士事務所に電話して聞くのは面倒だと感じるのであれば参考にしてください。
なお、弁護士事務所等の「過払金5分診断」は過払金の可能性を診断するものであって、あくまで営業広告であると認識してください。そして、その営業広告の中で、「今すぐ債務減額制度に申請する」とか「貴方も返金を受けられる」等の広告は明らかに虚偽あるいは過剰広告で悪質な広告ですので注意が必要です。
そもそも、債務減額制度なるものは存在しません。利息制限法所定の制限利率を超えて借入をしていた期間があれば債務は少なくなりますが貸金業者によって対応はまちまちで、直ぐに計算通りに減額に応じるところもあれば訴訟まで持っていかないと応じない金融会社もあります。
また、貸金業者の中には過払金返還請求(または「不当利得返還請求」)の訴訟を提起されても、法廷で見なし弁済を主張する等抵抗を続ける貸金業者も存在するため素人がまともに対峙するのは困難です。貸金業者によって対応がまちまちであり制度化されたとは言えない状況です。制度化されていれば平等に運用されるはずですから、そのような広告を行っているところは避けるようにしましょう。
なお、「国が認める救済措置」についてはこちらの弁護士の先生が分かり易く的確な説明がざれています。
制限利率超過期間(高金利期間)毎の過払金の試算
例えば、1ヶ月でも利息制限法の制限利率を超えている期間が有れば少額ですが利息の
過払は確実に発生します。但し、借入利率と利息制限法の制限利率との開き(利率差)や制限利率を超えている期間により過払金の額は大きく違ってきます。
また、過払金と言っても直ちに返金を受けられるわけではなく、契約上の残高と利息制限法所定の利率で引き直し計算した法律上の残高に差額が出ている状態で、法律上の残高分を完済していれば契約上の残高が残っていても過払金の返還請求をすることが出来ますが、法律上の残高が有れば債権減額を請求し残余金を支払っていく必要が有ります。
なお、利息制限法の制限利率で引き直し計算を行い過払金がある場合には、過払金に対して損害金を付して受け取ることが出来ます。
ここでは以下の条件下で試算してみます。
■条件
借入金額 50万円
当初借入利率 24%
利息の計算は月利計算(月利 2%)
支払方法 定額リボルビング(15,000円のwithin方式)
制限利率超過期間 3ヶ月、6ヶ月、2年、3年、4年
制限利率での借入期間 6ヶ月、1年、2年、3年
※法定利率を超える金利(年率24%)で一定期間(制限利率超過期間)を借り入れた後,金利改定により法定利率(年率18%)で返済を行った場合の過払い金を試算いたします。
新規借入が無い場合
法定金利を超えた期間と過払金の計算方法例
下記の表は、3ヶ月間利息制限法の制限利率を超える年利率24%(月利2%)で貸付けた後に制限利率に金利改定した場合の返済例です。上段の項目欄の左側の■の部分は契約上の返済内容です。右側の■の部分は、利息制限法の制限利率で引き直し計算したものです。
表中①の行は、利息制限法所定利率で引き直したところ2,500円利息を過剰に徴取していたので元金の返済に充当されます。②は利息制限法所定利率を超える高利率で貸付けた3回分の過剰利息です。4ヶ月以降は3回目までに過剰に支払った分を元金に充当した結果元金残高が減少したために利息制限法の制限利率と同率で有っても少しづつ過払金が増えていきます。それが、6ヶ月目が③、1年目が➃、2年目が➄、3年目が➅です。⑦は約定完済月で、このマイナスの金額14,734円は実際に返金を求めることが出来ます。
※重要なのは、1回でも過払利息が発生し元金に充当すると、その後利息制限法の制限利率に金利改定してもその後も過払い利息は発生するということです。
法定金利を超えた期間と過払金
右の表は、貸付金500,000円を利息制限法所定の制限利率を超える年利24%で貸付けた期間とその後金利改定で制限利率の15%で貸付けた場合の過払い利息を計算したものです。
縦の列は、制原利率を超える高金利貸付期間、横の行の0ヶ月などの期間表示は制原利率を超える高金利貸付期間の最後の月の過払金で、6ヶ月は金利改定後6ヶ月目の過払金です。
但し、表の過払金は過払い利息として元金に充当した金額であって、返金の対象となる過剰支払された金額では有りません。つまり、契約上の残元金から控除される金額です。
枠内随時追加借入有り
法定金利を超えた期間と過払金
カードローンで借り入れをすると、カードローンの限度枠が空く度に借り入れを繰り返す悪魔のループに陥りやすくなります。この限度枠が空く度に借り入れを繰り返した場合は、前例の追加で借り入れを行わなかった場合と比較して過払金はどう変わるのか検証してみます。
枠内随時追加借入を行った場合は、過払金は借り入れを行わなかった場合に比べて多いものの残高の減少スピードは極端に遅くなります。
借入利率別過払金発生時期と金額
カードキャッシングやカードローンの貸付金利は、クレサラ問題が社会問題化して以降段階的に引き下がられてきました。そのため、借入時期が古いほど高金利で借り入れしていたことになります。ここでは、借入金利毎に借入期間毎の過払金と、さらに継続して限度額枠内で借入と返済を繰り返した場合の過払金を試算いたします。
■条件
借入金額 50万円
利息の計算 月利計算
過払金損害金利率 年5%の月利計算
支払方法 元利金25,000円のwithin方式リボルビング払
追加借入 借入限度枠解放時に即時借入
「残高の内訳」欄の「引き直し後の残高」とは、利息制限法の制限利率で利息の計算を行い過剰に支払った利息を元金に充当した場合の残高で朱書の場合は、法律上支払い義務は無く、逆に返還を請求できる金額です。
「契約上の残高」も「引直し後の残高」も追加借り入れ前の残高、すなわち約定金支払後の残高です。高金利の場合は、借入を繰り返しても2~3年強で支払い義務はなくなることになります。
なお、本来は日割り計算で行うべきところ日割り計算では借入月によって金額が違ってくるため検証例を多種準備する必要があるため月利計算としました。