みなし利息の定義と見なし利息が実質金利に与える影響

利息と見なされる費用の種類

現在では、無担保の証書貸付やカードローンの契約や借入れを行う際に「事務手数料」、「ATM利用料」及び「借入手数料」の名目で金員を徴取されることはありません。

 

但し、無担保の証書貸付の場合には、収入印紙代や公正証書作成費用が徴取されることがあります。また、不動産担保ローン(住宅ローンを含む)の場合は、事務手数料、公正証書作成費用、抵当権設定費用等が契約時に発生する他、完済時までに一部繰り上げ返済手数料、全額繰り上げ返済手数料及び抵当権抹消費用が発生します。

 

このような費用の内一部の費用は、利息制限法及び出資法によって利息としてみなされる場合があります。法律によって、利息としてみなされる範囲は違っているものの、それぞれの法律に基づいて実質金利を計算し法律の制限利率以下になるような貸付にしなければなりません。

 

また、利息の計算は残債方式で後払いとしなければなりませんので、利息が発生していない場合は元金の返済に充当したり、そもそも貸付額から減じなければなりません。金銭消費貸借契約書に貸付額1,000,000円と記載してあっても、貸付時に発生する事務手数料等の名目で聴取したみなし利息が50,000円の場合はその金額を差し引いた950,000円を貸付額として実質金利の計算を行わないといけません。

 

利息制限法法に基づく実質金利

 

利息制限法では、『礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもつてするかを問わず、金銭の貸付けに関し債権者の受ける元本以外の金銭(契約の締結及び債務の弁済の費用であつて、次に掲げるものを除く。)のうち、金銭の貸付け及び弁済に用いるため債務者に交付されたカードの再発行の手数料その他の債務者の要請により債権者が行う事務の費用として政令で定めるものを除いたものをいう。』と定めています。

見なし利息に該当しない費用

上記のみなし利息には例外があり、「契約の締結及び債務の弁済の費用」と「債務者の要請により債権者が行う事務の費用」については、みなし利息には当たりません。具体的には、契約書作成費用、公正証書作成費用、印紙代、返済金の送金手数料、登記抹消費用などは、みなし利息に該当しないこととされています。
  • カード再発行の手数料その他の債務者の要請により債権者が行う事務の費用として政令で定めるもの
  • 公租公課(印紙代や登録免許税など)
  • 強制執行の費用、担保権の実行費用
  • ATM手数料(1万円以下=110円まで、1万円超=220円まで)

見なし利息に該当する費用

次の項目に該当する費用ははみなし利息と判断されます。

  • 事務手数料
  • 調査料
  • 交通費
  • 繰上返済手数料(一部繰り上げ返済手数料を含む)
  • 残高等各種証明発行手数料

出資法に基づく実質金利

 

出資法が改正される前は、「金銭の貸付を行なう者がその貸付に関し受け取る金銭は、如何なる名義をもってするかを問わず利息」と見なされていました。しかし。改正に伴い上限が引き下げられ利息制限法の上限金利と一部一致することになりました。そのため、改正以前の条文のままだと利息制限法と出資法の利息上限に差異が生じ、罰則の有る出資法の方が利率が高くなり、利息制限法の制限利率が意味をなさなくなることが考えられました。

 

今回の改正に伴う条文の変更に伴いみなし利息の内容が統一され矛盾は解消されたと言えます。

出資法では、『金銭の貸付けを行う者がその貸付けに関し受ける金銭は,次に掲げるものを除き,礼金,手数料,調査料その他いかなる名義をもつてするかを問わず,利息とみなす。貸し付けられた金銭について支払を受領し,又は要求する者が,その受領又は要求に関し受ける元本以外の金銭についても,同様とする。』としています。

みなし利息から除外される費用は次の通りです。

見なし利息に該当しない費用

契約の締結または債務の弁済の費用であって,次に掲げるもの

  1. 公租公課の支払に充てられるべきもの(印紙税,登録免許税)
  2. 強制執行の費用、担保権の実行としての競売の手続きの費用、その他公の機関が行う手続に関してその機関に支払うべきもの
  3. 貸付けの相手方が貸付けに係る金銭の受領又は弁済のために利用する現金自動支払機その他の機械の利用料(政令で定める額の範囲内のものに限る。)

また,金銭の貸付け及び弁済に用いるために交付されたカードの再発行に係る手数料その他の貸付けの相手方の要請により貸付けを行う者が行う事務の費用として政令で定めるものもみなし利息に含まれません(ローンカード紛失に伴う再発行手数料)。

見なし利息に該当する費用

上記「みなし利息に該当しない費用」に含まれない全ての費用

法律の改正に伴い基本的には利息制限法に定める定義と同じです。

みなし利息がある場合の実質金利の算出

次の貸付条件下でみなし利息がある場合の実質金利を検証いたします。なお、別途の検証例と同様に貸付期間が全く同じであっても貸付月が大の月か小の月かによって実質金利は違ってきますので、本例はみなし利息が及ぼす表面金利と実質金利の差についての検証例と認識してください。

見なし利息がある場合の実質金利の算出

貸付日:2023年2月27日
貸付額:1,000,000円
事務手数料:10,000円(みなし利息)
貸付利率:年6%(表面金利)
返済回数:12回(1年)
返済方法:月利残債元利均等返済方式
また、月々の元金・利息の内訳は、月利で利息を算出した後、月払金額から利息を減じて元金支払額を求めています。

 

表面金利6%がみなし利息を考慮すると実質金利が一挙に2.04%も上昇し割合も33%上昇の年8.04%になりましたが、最終回での利息充当額が極端に多く年利換算した金利も176.94%と異常に高く出ているため誤差が生じ易いので修正のため再計算しました。

見なし利息がある場合の実質金利の算出(修正)
結果は右の表の通りで7.94%になりました。7.94%で別途引き直し計算を行い検証したところ概ね納得のいく結果となりました。

 

修正して求められた実質金利の検証は右下の表になります。最終回の2026年2月27日返済後の元金残高がマイナス15円で、この金額は年7.94%の1日分の金利にも満たず妥当であると考えます。

 

なお、実質金利を求める方法は他のページの検証と同じく平均残高法です。

 

 

実質金利の定義

以上のことから、実質金利とは『借入時に現に受領した金額を元金(別途費用の支払いがある場合はその費用相当額も受

見なし利息がある場合の実質金利の検証

領金額から控除する)とし、総支払額から元金を減じて求められた金額は全て利息と見なし、また支払の都度返済金は、同一利率の日割り計算で求めた利息に充当し残金は元金の返済に充当する方法で計算を行い、最終的に元金残高0,未払い利息・超過利息0となる金利』と言えます。