典型契約

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民法に規定される典型契約には、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13種類があります。これらはそれぞれ異なる目的と構造を持ち、双務契約片務契約要物契約・諾成契約、有償契約・無償契約といった分類によって特徴づけられる。

まず贈与契約は、無償で自己の財産を相手方に与えることを内容とする片務契約であり、原則として諾成契約でありますが、書面によらない場合は履行前に取消が可能です。無償契約であり、財産の移転に対する見返りを要しません。親族間での贈与や、寄付行為などが典型例です。

売買契約は、物または権利の移転と代金支払いを内容とする典型的な双務契約であり、諾成契約に分類されます。有償契約であり、代金と引き換えに所有権や占有権を移転する点が特徴です。現代社会において最も日常的に行われる契約類型であり、商品の購入から不動産取引に至るまで広範に存在します。

交換契約は、互いに物を引き渡し合うことを約束する契約であり、双務契約・諾成契約・有償契約に該当します。売買契約に近いものの、対価が金銭ではなく、別の物である点が特徴です。現代では物々交換市場や、不動産同士の交換契約などに現れています。

消費貸借契約は、金銭その他の代替物を借り受け、後日これと同種・同等・同量の物を返還する契約です。これは片務契約(ただし利息がある場合には双務契約)であり、要物契約(現実に目的物が渡された時に成立)とされていましたが、2020年の民法改正以降は書面による契約の場合は諾成契約と見做されます。有償または無償、どちらの形もあり、現代の金融取引では極めて一般的な契約形態です。

次に使用貸借契約は、物を無償で貸し出し、使用収益させた後にその物自体を返還させる契約です。片務契約、諾成契約(特に現実の引渡しを要件としないが、引渡しによる成立もありうる)、且つ無償契約です。親族間や友人間での住宅や車両の貸与など、実生活でもよく見られます。

賃貸借契約は、物の使用収益をさせることに対して賃料を受け取る双務契約で、諾成契約に分類されます。有償契約であり、住宅の賃貸、レンタルオフィス、レンタカーなどの実態例が多く存在します。賃借人の使用権を保護する法制度も発達しています。

雇用契約は、労務を提供し、その対価として報酬を受け取る双務契約であり、諾成契約に該当します。有償契約であり、労働市場の根幹を成す重要な契約です。アルバイト契約から正社員契約に至るまで、多様な形態で社会に根付いています。

請負契約は、一定の仕事を完成させることを約し、その成果に対して報酬が支払われる双務契約で、諾成契約に分類されます。有償契約であり、建築工事、システム開発、翻訳業務など成果物を前提とした取引が典型的です。成果完成に重きを置く点が、雇用契約との違いとなります。

委任契約は、一定の法律行為を受任者に委託する契約で、諾成契約にあたります。無償契約が原則ですが、報酬を定めれば有償契約となります。弁護士への訴訟委任、税理士への申告代行依頼などが例であり、特に専門家との契約では有償となる場合が多く。受任者の善管注意義務が重視されます。

寄託契約は、物を預け、その保管を依頼する契約で、通常は片務契約、諾成契約であり、無償契約が原則です。ただし、報酬付き寄託の場合には双務契約・有償契約となります。現代では倉庫業者への保管委託やホテルのクロークサービスなどの形態も見られます。

組合契約は、複数人が出資し、共同で事業を営み、利益と損失を分かち合う契約であり、双務契約・諾成契約に分類されます。原則として無償契約ですが、営利を目的とする場合には実質的には出資と利益分配によって有償的要素を持ちます。事業パートナーシップや共同研究契約などが典型です。

終身定期金契約は、一定の財産を譲渡する代わりに、譲受人が終身または一定期間、定期的に金銭を支払う契約であり、双務契約かつ諾成契約に該当します。有償契約であり、生命保険型商品や老後資金対策の一環として利用されることもあります。

最後に和解契約は、当事者間に争いのある権利関係について互いに譲歩してその確定を図る契約であり、双務契約・諾成契約に分類されます。有償・無償の別はありませんが、通常は経済的利益や争訟リスクの低減を目的とするため、実質的な経済的対価を伴うことが多く。訴訟上の和解や示談契約が典型的です。

以上のように、民法における典型契約はそれぞれに契約の成立要件や効果に違いがあり、双務性・片務性、諾成性・要物性、有償性・無償性といった分類を通じてその特色を理解することが重要です。そして、これらの契約は現代社会においても、各分野で広く現実に運用され続けていまさす。

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