「自力救済」とは、本来であれば裁判所などの公的機関を通じて権利の実現を図るべきところを、当事者が自らの力で権利の回復や保全を行うことを指します。たとえば、金銭を貸した相手が返済しないからといって、その人の家に勝手に入り財産を持ち出す、あるいは家賃滞納者を正規の手続きを経ずに部屋から追い出すなどが典型例です。
こうした行為は一見すると、自分の正当な権利を守ろうとしているようにも見えますが、国家による法的手続きを経ずに私的に問題を解決しようとするものであり、法秩序の安定を脅かす重大な問題を含んでいます。日本の法制度では、原則として自力救済は禁止されており、正当な権利が存在していても、それを実現する手段として勝手に行動することは許されません。権利の実現は、裁判所を通じた訴訟や強制執行などの法的手段によって行うべきとされています。
自力救済が問題視される主な理由は、紛争の拡大や暴力の誘発、公的秩序の崩壊を引き起こすおそれがあるからです。また、行為の内容によっては、住居侵入罪、窃盗罪、恐喝罪、不法侵入など、刑法上の犯罪に該当する可能性もあります。たとえ相手に非があるとしても、法的手続きを飛ばして自己判断で実力行使することは、犯罪として処罰される危険を伴います。
このように、自力救済は一見すると迅速な解決手段のように思われがちですが、法的には原則禁止されており、社会的にも危険な行為とされています。したがって、権利の実現や保全は、必ず法の定めた正当な手段によって行うことが求められています。