要物契約

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要物契約とは、契約の効力が発生するために目的物の引渡しを必要とする契約形態であり、旧民法における金銭消費貸借契約(つまりお金の貸し借り)はまさにこの要物契約とされていました。つまり、旧法の下では、当事者が「お金を貸す」という合意をしても、それだけでは契約として成立せず、実際に金銭が貸し渡された時点で初めて契約が有効になるという特徴がありました。しかし、2017年の民法改正により、この点が大きく変更され、金銭消費貸借契約は要物契約から諾成契約、つまり合意だけで成立する契約へと位置づけが変わりました。これにより、改正民法(2020年施行)では、当事者間で「いくらを、いつまでに返す」といった契約内容に合意すれば、それだけで契約は有効に成立することになります。もっとも、現実には契約書や借用証書の作成、あるいは実際の金銭の授受をもって契約の証拠とされることが多いため、実務上の大きな混乱はありませんが、法的な位置づけが明確になった点は重要です。このように、金銭消費貸借契約に関する民法の扱いは、旧法では要物契約、改正後は諾成契約とされ、契約の成立時点に関する理解に大きな変化が生じました。

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