証書貸付における契約締結の方式には、「相対方式」と「差し入れ式」の二つがあります。相対方式は、貸主と借主の双方が2通の契約書に署名押印し、各自1通ずつ保管する方法で、契約の対等性や双方の確認が重視されます。これに対して差し入れ式は、借主が貸付条件などを記載した貸付証書に署名捺印したうえで、それを貸主に差し入れる(提出する)ことにより契約が成立する方式です。この場合、契約書は1通しか作成されず、借主には控えが交付されることが一般的です。差し入れ式の利点は、契約書が1通で済むため印紙税の負担が軽減される点であり、これが実務上広く採用される理由の一つとなっています。
また、証書貸付における「貸付証書」は、貸付金額や返済条件などを記した正式な契約書であり、貸主・借主間の金銭消費貸借契約の証拠となります。これに対して「借用証書」は、借主が金銭を借りたことと返済の義務があることを一方的に認める文書で、貸主に交付する形で用いられる点に違いがあります。さらに、「証文」という語は、借用証書や契約書など金銭の貸借に関する文書全般を指す広い意味で用いられ、やや古風な表現としても知られています。