株券などの有価証券を譲渡担保とした場合、担保権の実行は、債務者が弁済を怠った際に担保権者が担保として受け取っていた有価証券の所有権を実質的に取得し、これを売却または処分することによって債権の回収を図るという形で行われます。
譲渡担保とは、担保設定時に形式上は担保権者へ所有権を移転させるが、実質的には債務弁済の担保として移転されているにすぎず、債務が完済されれば所有権は元の債務者に戻るという性質を持つ担保手法です。そのため、担保権の実行にあたっては、まず債務不履行が発生したことを確認し、その後、担保権者は譲渡を受けていた有価証券を処分し、その売却代金をもって被担保債権に充当することが可能になります。ただし、担保として譲渡を受けた証券を任意に売却する行為は、担保目的に照らして不当利得や信義則違反とならないよう、事前の通知や債務者との協議、適正な売却方法の選定などが求められる場合もあり、裁判例では担保権者が自己の利益を不当に優先して担保を処分した場合、担保目的の逸脱として無効とされることもあります。
したがって、譲渡担保に基づく担保権の実行は、形式上は所有権に基づく処分行為であっても、実質的には担保の範囲と目的に則った公正な手続きによって行われなければならず、慎重な運用が求められます。