貸付金に対する利息の付し方の種類
お金を借りるときには、一般的に利息が付きます。個人間の貸し借りの場合は、無利息の場合もありますが業として貸付を行なう銀行やクレジット会社等のノンバンクから借入れる場合は必ず利息が付きます。また、借りる場合だけでなく預貯金にも利息が付きますが、貸付の場合も預貯金の場合も利息の計算は全て同じというわけではありません。
利息の計算方法は、一般的には単利と複利(重利)に分けられますが、元加方式という返済方式の場合は一見単利の様に思われますが複利で計算されているケースもあります。
単利の計算方法と特徴
単利は,当初の元本(または、元金の返済が有った場合は残元金)に対してのみ同じ利率で利息を付す計算方法です。貸付の場合、元利均等返済や元金均等返済の場合は毎月返済が発生するため複利計算に適していませんので単利になる他、任意返済が可能で毎月返済となるリボルビング払いも単利になります。
元利均等返済でも、半年賦払い(ボーナス払い)については1ヶ月複利で計算している場合もありますが、現在では単利の方が圧倒的に多いです。
単利の金利計算は
利息=元金×貸付利率(年利)×日数÷365
です。
右上の表は、
貸付金額200,000円、利率15.00%、期間1年の単利での利息です。
上式に当てはめると、
30,000=200,000×0.15×365÷365
です。
右の図は、上記貸付における元金及び利息の増加を占めしたイメージ図です。
預貯金の場合、普通預金及び期間の短い定期預金は単利が多くなります。特に、普通預金は出入りが激しく複利計算に適しません。
普通預金の場合、日々の残高を積数計算するか、日々の利息を積算して2月と8月の年2回半年分を支払うのが一般的です。付利単位は、1円、100円及び1,000円ですが、現在の低金利時代にあっては付利単位10,000円でも金利は付きません。
複利(重利)の計算方法と特徴
複利は、利息が順次元本に組み入れられ,利息に対しても利息が発生する付利方法です。重利は複利と同義語として扱われますが、重利を二重金利として捉えると必ずしも同じとは言えなくなります。
例えば、約定返済日に残金500,000円と未払利息50,000円が有り支払困難を理由として、同日付で新たに元金550,000円、貸付利率6.00%で借換えを行った場合は明らかに二重金利ですが複利では有りません。借換えだけでなく、貸付金と売掛金の合計を利息を付した準消費貸借の目的として契約した場合も同じです。
複利は経済学的用語で重利は法学的用語として使用することが多いと理解することも出来ます。
複利は預貯金等で多用されるのに対し、重利は下記で説明している様に民法405条で利息の支払いが1年以上遅滞した場合に元金に組み入れることが出来る法定重利のイメージがあります。
複利の金利計算は、1ヶ月複利の場合
利息=元金×(1+貸付利率÷12)^返済回数
です。
右の表は、
貸付金額200,000円、利率15.00%、期間1年の複利での利息です。
上式に当てはめると、
32,151=200,000×(1+0.15÷12)^12
です。
単利よりも2,151円利息が多くなりました。
利息を元金に組み入れることで元金残高が増加してのが分かり、単利の場合は元金が一定であるのと比べて対照的です。
複利は1ヶ月複利、半年複利及び1年複利が有りますが、預貯金の場合定期預金や積立預金では半年複利及び1年複利で付利されるのが一般的で、1ヶ月複利での商品は少ないです。預貯金は、利率も重要ですが複利商品であるかも重要です。僅かな金利差でも単利と複利では利回りが大きく違ってきます。
元加という特殊な返済方法
元加とは
元加は銀行の当座貸越契約によるカードローンを含む貸付の返済方法です。元加は文字通り元金に加えると解釈出来ますは、利息を元金と見なすと考える方法と約定支払分を一旦自動貸越で返済することで新たな借入が発生すると同時に返済も行うと言えます。但し、自動貸越で返済がされても約定返済は行わなければならない場合もあります。
利息相当額の元加と毎月定額返済の場合
貸付金額200,000円、利率15.00%、毎月10,000円の定額払いにおいて、通常の日割り残債方式と利息元加方式の返済内容を比較してみます。
閏年の場合も年365日として計算しています。
右の表は、元加されない場合の通常の返済例で返済方法はリボルビング返済をイメージしています。
1年間で支払った利息は23,474円、元金残高は、103,474円です。
一方、左の表は約定返済日に利息相当額を元加して元金残高が一時的に増加しても、同日に返済することで、結局元加された利息相当額と10,000円から利息相当額を控除した残金を元金に充当返済する形になり、元加の影響は有りません。
通常の残債方式による返済と同じく、1年間の利息は23,474円で、元金残高も103,474円と同じです。
右の図は、約定日まで発生した利息が約定返済日に元加され一時的に元金が貸付時の元金(もしくは、前回返済後の残高)+利息の合計額に増額されますが、直ちに定額返済を受けることで、元金残高も減少しています。
返済を行わず自動貸越される場合
右の表は、借主が約定返済をしなくても、限度額の範囲まで自動で貸越(貸付)を行う元加の例です。
貸付条件は「利息相当額の元加と毎月定額返済の場合」と同じです。
ここでは、約定日までの未収利息相当額2,301円と元金7,699円の合計10,000円を自動貸越で元加することで約定返済する内容なっています。そのため、1ヶ月目に2,301円元金が増えています。
利息の元加を行わずいきなり自動貸付を行なうことで利息の返済を行い利息を元金に置換えることで元加の形になるという考え方もあります。
自動貸越による元加を繰り返した場合、1年で支払った(元加された)利息相当額は、32,151円になります。
この利息相当額は、1ヶ月複利で1年間計算した利息と同額になります。
すなわち、先に記載の複利計算式で求められた
=200,000×(1+0.15÷12)^12
=32,151
と同じ金額です。
右の図は、「返済を行わず自動貸越される場合」の元金と利息の変化のイメージ図です。元金が月毎に増加しており、利息の増加は図からは判断できませんが、計算上元金残高に比例して増加しているのは明らかです。
結論として
元加は、毎月発生する利息以上の金額を返済すれば単利での利息になるが、返済を行わず自動貸越に依存した場合は、利息の計算は複利となり著しい負担を強いられる可能性があります。