貸金業及び割賦販売法に基づく実質金利の算定方法と考え方

実質金利の概念

金融における実質金利

ここで扱う実質金利は、経済用語としての「実質金利」ではなく、金融用語としての「実質金利」について分かり易く説明していきます。

貸付と実質金利

ここで説明します金融用語としての実質金利についても、元金に対する利息の割合、返済方法及び借入期間から計算して「結果的に実質金利は○〇%です。」という場合と、表面金利=実質金利の条件のもと日割り計算で利息を計算することで返済途中の如何なる段階でも常に金利が一定である場合の実質金利とでは意味合いが違ってきます。

前者の場合は、アドオン金利等の貸付、利息先取り貸付やみなし利息が発生する貸付を実質金利に換算するときに使われ、後者の場合は利息先取りやみなし利息が全くない貸付で、しかも常に同じ利率で利息が生じ続ける貸付で実質金利としての意味を持ちます。さらに、正確を期すのであれば月利残債方式で計算するだけでは不十分で、日割り計算を行う必要が有ります。

 

但し、貸金業法も割賦販売法もそこまでの正確性は求めていないのは、計算式、計算する際の単位、算出された実質金利の表示義務となる単位が小数点第二位以下を切り捨て小数点第一位までを表示することを容認していることからも明らかです。

バロメーターとしての実質金利

実質金利は、貸付に掛かる金利のバロメーターとなるもので、統一された計算方法及び条件に基づき求められる金利の値は金利の高低を比較するのに極めて有効です。
以下に貸金業法及び割賦販売法に定められた実質金利の計算方法及び実質金利を計算する上での条件を説明します。

実質金利算定の方法・条件

元金・利息の充当方法

  • 利息は、残債方式で計算し経過分を後払いとし、前払い(先取)はしない。
  • 経過利息を超える返済がある場合は、元金の返済に充当する。
  • 利息を前払いで返済した場合は、初回については元金から減じ、途中で返済した場合は経過利息が発生している場合は経過利息に充当し、残金は元金の返済に充当する。
  • 契約に関わる費用及び返済に関わる費用を除く手数料、調査料等の名目で支払った金員は全て利息と見なす。
  • 利息の計算は、日割り計算とする。

計算式

貸金業法第14条第1号に定める施行規則別表及び割賦販売法各条に定める別表に基づく実質金利の算定式は、以下の通りです。

 

但し、貸金業法第14条第1号に定める施行規則別表の計算式にはF(利息及びみなし利息)の値を代入する表記が無く計算式としては不備があると思われますので、計算式は割賦販売法に定める別表に基づいています。
但し、説明文は、貸金業法施行規則別表に基づく表記となっています。

貸金業法第14条第1号に定める実質金利の算定式(1年)nは、返済回数
Tiは、年を単位として表した次の期間

イ iが1のときは、金銭を交付した日から第一回の弁済日の前日までの期間
ロ iが2以上のときは、直前の弁済日から第i回の弁済日の前日までの期間

Uiは、次の値

イ iが1のときは、実際に利用可能な貸付けの金額
ロ iが2以上のときは、次式により算出する未返済金の額

Ui=U(i-1)-(P(i-1)-R・U(i-1)・T(i-1))

Piは、第i回の弁済の金額とする。
Rは、法第十四条第一号に規定する貸付けの利率(又は割賦手数料の利率)
Fは、法第十四条第一号に規定する利息及びみなし利息(割賦手数料の総額)
・は*と同じく乗算を表します。

 

下図は、貸金業法及び割賦販売法に定める実質年率の計算方法に基づく算定例です。

貸付条件は

貸付日;2023年2月27日
貸付額;1,000,000円
貸付利率;年6%
返済回数;12回(1年)
返済方法;月利残債元利均等返済方式
また、月々の元金・利息の内訳は、月利で利息を算出した後、月払金額から利息を減じて元金支払額を求めています。

※閏年を366日で計算すると以下の通り複雑になるため、閏年を無視して年365日として計算しています。

    • 2024年1月27日のTiの期間計算を2022年12月31日までは365日計算、2024年1月1日以降は年366日で計算する必要が有る。
    • 期間の計算を、貸付日から第1回返済日の前目まで、または前回返済日から次回返済日の前日まで計算する必要がある。
    • ここでは、実質年率の算出の考え方を説明するため簡単な方法が理解し易い。
    • 年366日で計算した場合は実質年率の算出に与える影響も検証する必要が有る。割賦販売法・貸金業法に基づく実質年率の算出例

上記の法指定の計算式の図で、Fに該当するのはで、Ui*Tiに該当するのがになります。を計算するに当たり期間Tiは、の通り年を単位として表した期間であるため、日数を365で除して求めています。(表中左から三列目に該当)

法指定の計算式と平均残高法との関係

貸金業法及び割賦販売法に定める実質年率の計算式と先に説明した「平均残高法」は、計算式に僅かな違いがあるように見えますが、結果的に1日の利率を求め365倍することで年率に換算するということでは同じです。法指定の計算式と違って平均残高法は最後以外は整数で計算するので僅かながら正確かもしれませんが、表示する金利に影響は出ない範囲と思われます。