クレジットカード利用時のサイン決済廃止の理由と影響
サイン決済の概要と廃止の背景
クレジットカードのサイン決済とは何か?

サイン決済とは、クレジットカードを利用する際にカード所有者がサインをすることで取引を承認する決済方法のことです。また販売する加盟店としては、カード裏面のサインとカード売上票のサインを照合することで購入者が真のカードホルダーであることを確認し不正利用者のチェックを行います。
一般的に、1万円以下の少額決済やオンライン決済端末が導入されていない加盟店で行われていました。店舗やレストランで会計時に、インプリンターで印字された売上票の控えに署名するという形が一般的でした。この方式では、署名が本人確認の役割を果たしていましたが、署名の正確さを確認する機会はまちまちでした。因みに、クレジットカードの裏面にサインがされている割合は少ないうえに、クレジットカードの固く滑りやすい裏面にサインする場合と売上票の紙にサインする場合では筆跡は同じには見えず照合はかなり難しいです。
サイン決済が利用されてきた背景
サイン決済が長年利用されてきた背景は、レストラン、ホテルや小売店舗で専ら1万円以下の少額決済を行う加盟店でS-CAT,G-CAT及び多機能決済端末を導入していない場合に、クレジットカードの裏面のサインと利用者が売上票に記載したサインを照合し本人確認することを条件にクレジット売上を認めてきたものです。1万円を超える金額の場合でオンライン端末が無い場合は、電話でクレジット会社にオーソリを依頼し承認番号の発行を受けた後インプリンターでカードをエンボスした売上票にサインをおこないます。
もともと、クレジットカードの売上時のサインはクレジット発祥のアメリカのサイン文化が大きく影響しています。アメリカでは、契約や支払いの証拠として「署名(サイン)」が非常に重視されてきました。これは、紙の契約書などでも本人確認としてサインを使う文化があり、その延長としてクレジットカード利用時にもサインが求められるようになりました。クレジットカードがアメリカで普及し始めた1950年代には、まだICチップも暗証番号もなかったため、「サイン=本人確認」の手段として機能していたのです。
クレジットカード自体がアメリカ発祥のもので、日本にもそのシステムごと導入されました。日本でも最初はアメリカと同様に、カード裏面のサインと照合する形で、カード利用時にサインを求める仕組みが採用されました。
廃止の背後にあるセキュリティ向上と業務の効率化
サイン決済が廃止される背景には、一つにはセキュリティ面の強化が挙げられます。クレジットカード不正利用被害が増加していることが問題視されています。2023年の国内におけるカード不正利用被害額は約540.9億円に達しており、その多くがインターネット上での番号盗用によるものです。インターネット上の番号盗用はフィッシング詐欺やスキミングによりカード情報を入手して悪用する方法です。そのため、対面売り上げとなるサイン決済を廃止しても不正利用が大きく減少するものではありません。但し、盗難カードによる短期間での買い周りの防止効果が期待できる他、加盟店の不正売上の防止と加盟店従業員等によるスキミング防止には一定の効果があると思われます。
クレジットカードのサイン廃止は、主に会計時間の短縮、レジ業務の簡略化などの店舗オペレーションのメリットとクレジットカード会社の売上票回収の廃止、売上処理の軽減及び不正防止の効果があります。
サイン決済廃止の決定に至った経緯
サイン決済の廃止決定は、日本クレジット協会が策定したセキュリティ強化方針を背景に進められました。2025年3月31日をもって原則としてサイン決済が廃止され、それ以降は暗証番号入力を基本としたシステムへ移行しました。この方針は、不正利用リスクを軽減する目的で導入されました。一方で、代行カードにみられるICチップ非搭載の磁気カードや海外発行のカードなど、一部の例外ケースでは引き続きサイン決済が可能とされています。また、少額取引に関しても暗証番号なしでの取引が認められる場合があります。これにより、利用者や店舗側の移行プロセスにも注意が必要です。