アドオン金利適用クレジットの早期返済における78分法の導入の経緯

78分法導入の経緯

均分法によるクレジットの手数料配分の問題点

貸金とクレジットの早期完済時における清算の考え方

ジットの返済途中で早期完済(全額繰り上げ返済)する場合は、独特の計算方法で計算して残余金を請求されます。住宅ローン等の元利均等残債方式の場合は、計算方法は極めて難解であるものの、残元金と未払い利息の合計にさらに繰り上げ返済(事務)手数料を加えたもので説明されれば理屈としては矛盾なく理解できます。

 

アドオン金利で計算されたオートローン等のクレジットの場合は、元利均等残債方式と違い立替代金と手数料(貸付の利息に相当)の合計が元本で早期完済の場合は未経過手数料を返金するという考え方です。しかも、この返金は正常完済の場合は契約に約款として記載してありますので止む無く返金しますが、期限の利益を喪失した場合は返金の必要は無く、しかもさらに損害金を付して請求できますので利息とは異なります。手数料に損害金を付しても重利にもなりません。

 

アドオン金利のクレジットの場合は、古くは立替金と手数料ともに均等に支払う均分法を採用していましたが、現在は78分法という方法で月々の手数料を配分し未経過手数料を返金方法を採っています。但し、別途に早期完済手数料が差し引かれます。

均分法による払い戻し計算の問題点

クレジットの場合は、手数料の計算がアドオン方式のため、月払金額が元金と手数料に明確に区分されていません。そのため、以前は収益としての手数料も総額を支払回数で除して毎月均等に配分する均分法で行っていました。

 

しかし、均分法は多くの問題点や矛盾を抱えていたほか、クレジット業界の過当競争のため収益率が急激に悪化したため是正する必要が生じました。
問題点及び矛盾点

  • 均分法の手数料返済金額では初期コスト及び借入金利負担を賄えないため逆ザヤになり、期限いっぱいで完済する約定完済でなければ利益がでない。
  • 不均等返済及びボーナス併用払いの場合実質金利が低くなり利鞘が低くなる。
  • 不良債権化により本来得られるべき利益が減少する。
  • 昭和50年代の中頃から加盟店(特にオートローン加盟店)に対するキックバックの導入がなされ、将来に渡って約定完済する前提で得られるであろう利益を先に加盟店に還元することで一層収益の悪化を招く事態になった。後年一部改善されたものの、加盟店の中にはキックバック分を見込んで値引きを行なう等の販売を行うところも出てきた。

収益改善を目的とした78分法導入

78分法で払い戻し手数料の軽減化

悪化した収益率を改善するために採用されたのが78分法です。当初は、早期完済における戻し手数料の計算に採用することで早期完済に伴う見込み収益の減少防止を図りましたが、その後、一部の信販会社で早期完済だけでなくクレジット売上の収益計算にも使うことで決算にも影響するようになりました。

 

但し、当初は信販会社の中には、クレジットのコストは回収に最も掛かり回収コストは残高に比例しないとの考え方から収益計算は均分法で行うべきとの考え方をするクレジット会社もありました。

 

しかし、早期完済に伴う78分法の導入とともに収益計算においても回収コストだけでなく残高に比例した金融コストを加味する必要性を認め78分法を採用するところもあります。正直なところは、「金融コストを加味する」というのは建前で、バブル崩壊後の不良債権の増大のため決算を組めない状況に陥った某信販会社が決算対策として収益の前倒しの出来る78分法を採用したのが始まりです。

 

収益力悪化の原因

そもそも過当競争により収益が悪化した原因は以下の理由です。

  • 大手信販会社の全国展開に伴い、個人信用情報に乏しい(当時は信用情報は自社情報のみで個人信用情報機関は存在していませんでした)状況で与信基準が下がった他、取引先拡大のため支払能力及び支払観念の希薄な顧客層にも積極的に信用供与した。
  • 低価格帯の量販店に対してゼロ金利等のクレジットの手数料引下げ競争が生じ低金利化した。
  • 一方で、顧客に高率の手数料を課し、得られるべき見込み手数料を販売店に「販促協力金」の名目でキックバックするため経費負担が増加した。
  • さらに、キックバックを悪用する販売店がクレジットを推進するため、クレジット利用を条件に値引き販売及び付属品のサービスを行った。しかも、クレジット契約後数か月以内の早期返済を指南したため、キックバック相当額を回収する前に完済されるため、売上が増えれば赤字が拡大する構図になった。

キックバックによる収益の悪化を排除するため取られた対策が、78分法による未経過手数料の計算、すなわち手数料を前倒しで収益化することで返還するべき未経過手数料を圧縮する方法です。

 

さらに、一旦販売店に支払ったキックバックを早期完済の場合は返還させる対策を行いました。車1~2台売れば従業員1人分の給料が賄えるといわれたキックバックの返還には、販売店の猛烈な反対が有りましたが最終的に導入に至りました。

収益力悪化の最大要因のキックバックの仕組み

因みに、クレジット会社が販売店に卸す(?)金利が6.00%で、購入者へのクレジット手数料が次の条件の場合の顧客が完済までに支払う手数料総額とクレジット会社が販売店に支払うキックバックの金額は次の通りです。
※卸金利とは、ネットまたはネット金利と呼ばれ、キックバックが発生しない金利です。
【条件】
クレジット対象金額:2,000,000円
卸し金利(キックバック無しの利率):年率 6%
購入者の手数料率(利率):10% 12% 15%
自動車の購入を想定したシュミレーションです。

 

これだけのキックバックが入れば、販売店の利益に大きく貢献する半面、どんぶり勘定しか出来ない経理に乏しい経営クレジットの顧客手数料とキックバックの金額の相関図者でも事業を営むこともできますし、経験が浅くても起業するきっかけになります。一方、購入者は市場金利より遥かに高い利率でクレジット契約をすることになり負担は大きくなります。

 

また、キックバックを原資として、「クレジットで買ってもらったら付属品を付けるとか、値引きをしてあげる。」と言って販売を促進した販売店も多くありました。これだけのキックバックがあれば、車の場合1~2台クレジットで販売すれば、営業マンの給料は十分賄えます。

78分法の考え方

78分法は、元金残高は契約時が一番多く毎月返済することで減少していきますが、利息も同じ割合で減少するという考え方で、しかも、元金残高の減少は均等で利息の減少も均等である、とするものです。例えば、120,000円を12回払いで支払う場合は毎月10,000円(=120,000円÷12回で)宛支払を行うため毎月の支払後元金残高は、110,000円、100,000円、90,000円、80,000円と減少していくので利息も同様に均等に減少するとする考え方に基づいています。

 

この返済方法は、正に元金均等返済と同じで元金は毎月一定額づつ減少し、利息はそれに比例して割合で減少していきます。しかし、実際のクレジットやローンの返済は元金と利息の合計が一定額の元利均等返済になっています。

つまり、78分法は元金均等返済と仮定して月々の手数料を求めているのであくまで近似式です。

 

78分法による戻し手数料の計算は、利息(手数料)の総額を元金残高に応じて按分し、期間が経過している分は収益として繰り入れ、未経過の利息(手数料)は借主に返却(戻す)するものです。ここで戻し手数料は、月割りで計算する方法と日割りで計算する方法が有りますが、日割り計算は貸金の場合に用いられるものの、現在ではアドオン方式での貸し付けは行われていないため、クレジットの戻し手数料の計算は月割り計算が主です。