金融機関提携保証型ローン拡大の背景
バブル崩壊の影響
銀行及び信用金庫等の金融機関(≠金融業)は、貸付を行なう際に原資となる預金のリスクヘッジのため物的・人的担保を取るのが一般的です。企業融資に重きを置いていた時代には、不動産、工場財団・鉄道財団等の組成された財産に抵当権を設定したり、信用保証協会、系列保証会社及び業界の保証会社の保証を売ることで貸付を行なってきました。
但し、バブル期においては静岡銀行を含む優良地銀三銀行(現在の地銀三大銀行とは別です)を除いて都銀を含む多くの金融機関が担保主義のもと貸付を拡大し結果的に不良債権が膨らみ国庫の投入という事態を招きました。担保に貸すのではなく人(の信用)に貸すという融資の基本を守らなかった結果と思われます。倒産に至ったのは、金融機関、その系列ノンバンク及び各金融機関の共同出資で設立された協同住宅ローンを除く住専7社等数多くありました。「親亀がこけたら子亀もこける」が如くに破綻が広がりました。また、金融機関から無理貸や半ば強制な貸付を受けていたため、平成2年の総量規制を発端とするバブル崩壊後、貸しはがし等の資金回収方針の結果、倒産を招き犠牲となった企業も数多くありました。
企業融資からリテールへの転換と問題点
バブル崩壊前より金融政策の変更を見込んだ金融機関は企業融資先を不動産関係から消費者信用産業にシフトした他、自らも新たな資金運用先としてリテールの小口融資に活路を見出そうとしました。しかし、個人信用情報に乏しく十分な情報を得られない金融機関は、個人信用情報不足による審査能力の欠如だけでなく小口融資の回収ノウハウも持たず債権保全も図れないため、ノンバンクである信販会社・クレジット会社や消費者金融専業者などと提携することで不足するノウハウを補うことにしました。
小口融資のノウハウを消費者信用産業に依存する金融機関
結果的に貸付審査という与信(信用供与)行為を保証審査という形で代行し、不良債権化した場合の回収手段として自力で回収するのではなく、保証を付けることで最終的に代位弁済という形で保証債務履行を求め結果的に全ての債権の保全が出来るようになりました。
実態としては、金融機関の融資担当(≒回収担当)はいずれ代位弁済されるという意識で借主と交渉しているの明らかで未収発生後の交渉は消極的、且つ雑で約束不履行があっても数週間放置され交渉記録も月に数回程度で交渉内容に進展も無く同じ調子の交渉内容が多いです。プロパー融資であったらバブル期の不良債権に匹敵するほどの不良貸倒債権が発生すると思われます。
現在、資金力で消費者信用産業を傘下に置きコントロールしつつ、小口融資のノウハウは信販会社及びクレジットカード会社等の消費者信用産業界に依存している状況といえます。リスクのほとんどない極めて優良な顧客は消費者信用産業界の保証を得るのではなく、金融機関の系列保証会社の保証を得るケースもあります。
金融機関提携保証型ローンの仕組みと契約関係
金融機関との提携保証型のローンには、契約内容で大きく分けて2種類があります。フリーローン及び目的ローン(オートローン、リフォームローン及び学資ローン等)と言われる単発貸付タイプの証書貸付とローンカードを発行しローンカード(またはローンカードに準ずる手段)を使用して限度額の範囲内で反復継続して借入が出来る当座貸越契約(または、継続的金銭消費貸借契約)タイプです。
いずれのタイプもローンカードを発行するか否か及び貸付の方法を除けば、契約までの流れ及び契約関係に大差はありません。下記に各タイプのフローを示しましたので比較してみてください。
証書貸付型提携ローンの仕組み
証書貸付型提携ローンの申込から融資までの流れ
証書貸付型金融機関提携保証ローンの仕組みと申込から融資までの流れは以下の通りです。
➊融資の申込
➋信用調査
❸情報機関信用照会・結果通知
❹保証依頼
❺信用調査
➏情報機関信用照会・結果通知
➐保証諾否連絡
➑融資
➒➓返済・保証委託料支払
⓫保証料(保証委託料)支払
➋と❸及び❺と➏は略同時に行われます。
❸と➏の信用情報機関は異なる情報機関です。
➓の保証委託料は、通常返済と同時に支払われます。しかし、金融機関の負担で保証会社に支払われる場合は、金融機関から保証会社に保証料として支払われます。
一般的に、保証会社への支払は一様に保証料と言われることが多いですが、借主の負担で支払われる場合は保証委託料、金融機関の負担で支払う場合は保証料が正しいです。
証書貸付型提携ローンの契約関係
金融機関提携保証ローンでは、各当事者間で様々な契約が存在します。借主、金融機関、保証会社及び個人信用情報機関間の契約を通じて円滑な融資が行われます。
各当事者間の契約関係は以下の通りです。
貸主である金融機関と借主間の契約
金融機関と借主間の契約は、金銭消費貸借契約です。金銭消費貸借契約は、民法典に記載されている13種類の契約の一つであることから典型契約(有名契約)と呼ばれています。また、その契約の性格から双務有償要物契約とされていましたが、2020年の民法改正に伴い一定の条件下で要物性を必要とせず諾成契約が求められるようになりました。つまり、必ずしも金銭の貸付が契約成立の要件ではなく、法律的効果を目的として当事者の意思が合致し書面を交わせば契約は成立し、貸主側には貸付の義務が生じることになりました。
お金の貸し借りは、金銭消費貸借契約ですが、本来消費貸借契約とは金銭に限らず当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約束して相手方から物を受け取れば消費貸借契約になります。借りた物をいったん使って(消費して)しまって、その借りた物と同等な物を返すということです。
銀行の場合、契約は金銭消費貸借契約(通称;借用書及び古くは証文)だけでなく、他に銀行取引約定書(通称;銀取)という取引ルールを定めた基本契約を締結することがあります。