個別クレジットとクレジットカードの仕組みと契約関係

割賦購入あっせん(個別クレジット)の概要

一概にクレジットと言っても、大きく分けて二種類に分けられ、さらにその内の一種類が二つに分類されます。割賦販売法では、さらに細かく分類することが出来ますが対象者や対象商品が限定されるため省略いたします。

まず、掛け売りに起源を持つ割賦販売で、自社割賦とも呼ばれています。この場合、売主と割賦販売業者は同じで契約は二者間契約です。掛け売りは、一般的に金利・手数料が付かないのに対して、割賦販売は一定の期間内に手数料を付して週賦、月賦もしくは年賦の方法で支払いをします。

 

次が割賦購入あっせんと言われるもので、所謂クレジットと言った場合はこの割賦購入あっせんを指します。割賦購入あっせん業を営む者を割賦購入あっせん業者と呼びますが、一般に信販会社と称し信用販売から来た名称です。また、クレジットカード会社も割賦購入あっせん業者です。業種としては信用販売ですが商品としては単語が逆になり販売信用となります。

 

さらに、割賦購入あっせんは個別信用購入あっせんと包括信用購入あっせんに分かれます。個別信用あっせんとは単発のクレジットで車の購入や家電の購入時に利用でき、包括信用購入あっせんとはクレジットカードの様に予め信用枠を与え、その範囲内でクレジットカードを提示して商品の購入やサービス(役務)の提供を受ける制度のことです。

 

古い法令用語も含めると、個別信用購入あっせんは個品割賦購入あっせん、個別クレジット及び個品割賦とも呼ばれ、包括信用購入あっせんは総合割賦購入あっせん及び総合割賦とも呼ばれていました。

個別信用購入あっせんの仕組みと契約関係

個別信用購入あっせんのフロー

個品割賦購入あっせん契約の仕組みと流れクレジットでの商品購入申込
クレジットの取扱審査依頼
信用情報照会(クレジットヒストリー照会)
クレジット申込の意思確認・在籍確認
審査結果の連絡
商品の引渡
商品購入代金立替払い
分割返済

クレジットの取扱可否の審査依頼は電話もしくはFAXで行われます。
即決対応の場合は10~20分程度で審査結果を連絡し、加盟店従業員が本人確認を行った後、申込意思の確認を行います。問題が無ければ当日商品の引渡が行われ持って帰ることが出来ます。

個別信用購入あっせんの契約関係

個別信用購入あっせん(個別クレジット)には各当事者間で上の図の様に契約関係があります。各当事者間の契約は以下の説明の通りです。

立替払契約

所謂、立替払契約と言われるクレジット契約は、様々な法的性格に解釈されてきました。最近は準委任説が最も有力で定説となっています。過去には学説、裁判官及び弁護士によって様々に解釈されてきました。

 

例えば無名契約説、金銭消費貸借契約説、準委任説、地位譲渡説そして債権譲渡説などです。法律家は一般的に新しい契約形態が生じたときは保守的で、民法典の典型契約(有名契約)に当てはめようとしますので上記の契約に該当させようとした、と思われます。

それぞれの法的性格は以下の通りです。

無名契約説(非典型契約)

民法典に定められた13種類の契約(典型契約あるいは有名契約という)のいずれにも該当しない新しいタイプの契約であると考える説です。
例えば、無名契約には

  • 取引基本契約
  • OEM契約
  • 派遣契約
  • 人材紹介契約
  • コンサルティング
  • 契約
  • リース契約
  • ライセンス使用許諾契約

等がありますが、一般に無名契約と言われている上記の契約の中にも典型契約である、と考える説もあります。

金銭消費貸借契約説

立替金はそもそも貸付金であり、支払いを販売店(加盟店)に支払う行為は代理受領と見なすことができ、手数料の実態は利息である。期限の利益を喪失しても残金全てを支払う必要は無く未経過分の手数料(=利息)は返還すべきである、とする説です。

昭和59年以前には、弁護士だけでなく裁判官の中にも「金銭消費貸借契約説」を主張する方がいて訴状を受理しない裁判所(支部)もありました。

 

本来は、訴訟の中の被告側の主張が有って議論すべきことで訴え自体を不受理にするのは如何なものかな、と疑問に思います。

債権譲渡説

債権譲渡とは、文字通り他人(本件の場合はクレジット会社)に対して債権を譲り渡すことです。
弁済期未到来の債権を早期に現金化したい場合、滞納状態に陥った不良債権を債権回収会社(サービサー)に売り渡す場合、別の債務の担保に供する譲渡担保の場合などに債権譲渡が行われることがあります。

 

しかし、一般にクレジット契約を伴う売買契約等は、クレジット会社の承認を停止条件とするもので、売買が成立する前に債権譲渡の予約契約を締結することになり無理があるように思われます。

地位譲渡説

契約上の地位を包括的にクレジット会社(信販会社)に譲渡する契約である、とする説です。例えば、売買契約を締結した後、売主がクレジット会社に地位を譲渡する契約を締結することにより売主の地位が信販会社にそのまま入れ替わると、ということです。

 

売主の地位の譲渡だけでなく、買主の地位も譲渡出来ます。この地位譲渡説が唱えられたときは、民法に規定は無く、長い間、判例による解釈(判例法)と学説などの理論に委ねられていました。しかし、現在は2020年の民法改正によって、条文化されています。

代位弁済契約説

クレジット会社は、買主に代わって(代位して)売主である販売店に商品購入代金等を支払うので、クレジット会社は、売主が買主に対して有していた売買代金請求権等を取得するという考え方です。

 

この説についても債権譲渡説と同じく、クレジット契約を伴う売買契約等は、クレジット会社の承認を停止条件とするものであり無理があるように思われます。

準委任説

信販会社は、顧客から委任を受けて販売店に商品代金等を支払うというものです。これは、民法656条にもとづく「法律行為ではない事務の委託」であるという説です。

クレジット業界においては、昭和59年に施行された改正割賦販売法を契機に、モデル約款において、次のような文言で「準委任契約」であることを明確にしています。

「顧客はクレジット会社が顧客に代わって販売店に立替払することを委託し、クレジット会社はこれを受託します」

 

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