債務不履行とは、契約などによって当事者が負っている義務(債務)を履行しないこと、あるいは履行が不完全であることをいいます。たとえば、売買契約において売主が商品を納期までに届けなかったり、買主が代金を支払わなかったりする場合がこれに当たります。債務不履行は大きく分けて、「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」の三つの類型に分類され、それぞれに応じた法的効果が生じます。
履行遅滞は、本来履行可能であったにもかかわらず、履行期を過ぎても義務を果たさない状態です。これに対して、履行不能は、契約成立後に債務の履行が客観的に不可能となった状態であり、たとえば目的物が火災で焼失するなどのケースが該当します。不完全履行は、一応債務が履行されたものの、その内容が契約に適合していない場合を指します。たとえば、不良品の引渡しなどが典型例です。
債務不履行があった場合、債権者は相手方に対して損害賠償請求を行うことができます。また、一定の場合には契約の解除も認められます。ただし、債務者に責任がない場合(たとえば不可抗力による履行不能)には、損害賠償や解除が認められないこともあります。債務不履行が争点となる際には、契約内容や履行の状況、当事者の責任の有無などが個別に検討されることになります。