バブル崩壊後、日本の金融機関は総量規制の導入に伴い、急速に貸出資産の圧縮を求められることになりました。この規制に対応するため、多くの銀行はリスクの高い貸出先や、担保力の乏しい中小企業、個人事業主に対して、早期の返済を求めたり、追加融資の打ち切り及び融資の切替の停止などの行いました、この一連の行為を「貸しはがし」といいます。本来、総量規制は、過剰な融資を抑制するために金融機関に対して資産の伸び率を一定範囲内に制限する政策であり、バブル期に急拡大した融資の過熱を冷ますことを目的としていました。
貸しはがしの影響は深刻で、資金繰りに依存していた多くの中小企業が事業継続に行き詰まり、倒産に追い込まれるケースが相次ぎました。また、金融機関自体も不良債権問題を抱えることになり、貸出姿勢は一層慎重になりました。その結果、必要な資金であっても新規融資に慎重になる「貸し渋り」が発生し、経済全体における資金循環が大きく滞ることになりました。こうした連鎖的な与信収縮は、バブル崩壊後の経済停滞を引き起こし、長期にわたる低成長とデフレが続く原因になりました。この状況は、単なる「失われた10年」では済まず、むしろ1990年代から2020年代にかけて続いた長期的な経済停滞の中で、今日では「失われた30年」とも表現されるようになったのです。
要するに、総量規制はバブル崩壊後の金融システム健全化を目指すものであったが、結果として貸しはがしや貸し渋りを通じて、企業活動や経済成長に深刻な悪影響をもたらし、その影響は30年以上にわたって日本経済に根強く残ることとなりました。