公正証書

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公正証書とは、公証人が法律に従って作成する公的な文書であり、法的な証明力や執行力を持つ点に大きな特徴があります。公正証書を作成するには、まず当事者が公証役場に赴き、公証人に対してその内容を口頭や書面で申し出ます。公証人は当事者の本人確認や意思確認を行い、法律的な問題がないかを慎重に審査したうえで、公正証書として正式に文書を作成します。作成後は原本が公証役場に保管され、当事者には正本や謄本が交付されます。

公正証書は、内容の正確性と作成手続きの公的性格が担保されているため、極めて高い証拠力を持ち、訴訟などで争いが生じた場合にも契約書として強い効力を発揮します。特に金銭の貸し借りに関する契約や離婚の際の養育費・慰謝料の取り決めなどでは、将来の紛争や履行トラブルを未然に防ぐ目的で公正証書が用いられることが一般的です。

また、公正証書は単なる契約書としての役割にとどまらず、一定の要件を満たすことで「債務名義」としての効力も持つ点が大きな特徴です。たとえば、金銭消費貸借契約を公正証書で作成する際、「期限までに支払いがない場合は直ちに強制執行に服する」旨の文言(執行認諾文言)を加えることによって、その公正証書は債務名義として認められます。債務名義とは、強制執行(財産の差押えなど)を行うために必要な法的文書のことであり、公正証書にこの効力がある場合、債権者は公正証書に執行文を付与することで、ただちに強制執行の手続きに移ることが可能になります。これは、貸主や権利者にとって非常に大きな安心材料となり、トラブル時の迅速な対応を可能にします。

このように、公正証書は単に契約内容を明文化するだけでなく、法的な執行力を持たせることで、より強固な契約関係を築くための重要な手段として、個人間取引や商取引など多くの場面で利用されています。

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