「期限の利益」とは、債務者が一定の期限が到来するまでは債務の履行をしなくてもよいという法律上の利益を指します。たとえば、分割払いの契約において、債務者は毎月決められた日に一定額を支払えばよく、全額をすぐに支払う義務はありません。このように、支払いの期限が定められていることで、債務者はその期間内に計画的に履行を行うことができるという利益を享受しています。
しかし、この「期限の利益」は無条件に保障されるものではなく、債務者が約束どおりに履行しない、担保を滅失・減少させる、あるいは支払不能に陥るなど、信頼関係を破るような事情がある場合には、債権者は「期限の利益を喪失させる」ことができます。そうなると、債務者は本来まだ到来していない期限の分も含めて、直ちに全額を支払わなければならなくなります。このように、期限の利益は債務者にとって大きな便宜である一方で、それを喪失することで一気に不利な立場に追い込まれることにもなります。