支払の遅滞と期限の利益喪失後の対応の方法と重要性
クレジットとローンにおける分割払いの権利
分割払の期限の利益とは
期限の利益とは、期限が到来するまで返済をしなくてもよいという債務者の権利をいいます。借主である債務者にとっては、支払いに期間的余裕が生じるため利益を得ることができます。一方、債権者の期限の利益は、分割払いの契約が安定的に続くことで継続的な利益が得られるメリットがありますが、期限の利益は本来債務者の権利であるため、債務者が期限の利益を放棄して繰り上げ返済すること自体は自由です。
期限の利益の定義と意義
期限の利益とは、債務者が債務の履行を一定期間先に延期できる利益のことです。債務者が返済をしなくてもよい期間に、その返済予定資金を他の用途に充てることができたり、その返済しなくて良い期間に返済資金を確保することができます。
すなわち、期限の利益は、債務者にとって重要な経済的なメリットをもたらします。債務者は、返済期限までお金を確保する必要がないため、他の投資や事業活動に資金を活用できます。このような資金の有効活用は、事業の成長や利益の増加につながる可能性があります。また、債権者から見ると、期限の利益は債務者にとっての負担軽減となります。返済期限までの時間的な余裕があることで、債務者が返済能力を確保しやすくなります。そのため、債権者は債務不履行のリスクを低減できるという利点があります。
以上のように、期限の利益は債務者にとっての経済的なメリットや負担軽減となる一方で、債権者にとっては返済確保に対するリスク低減となります。
期限の利益喪失とその事由
期限の利益喪失とは、期限が到来するまで返済をする必要がないという債務者の利益を失うことを指します。これは、金銭消費貸借契約や基本取引契約、売買契約の他割賦販売契約や個別クレジット契約(個別信用購入あっせん契約)などで、債務者に与えられた分割払いや未到来期限までの支払い猶予の権利を失い、債務残額を一括で支払わなければならない義務が生じるということを意味します。つまり、分割払いの権利の喪失です。
民法における喪失事由の概要
期限の利益喪失が生じるためには、民法や割賦販売法等の特別法で別途定める喪失事由を満たす必要があります。喪失事由とは、債務者の契約違反などによって期限の利益を剥奪することができる要件です。具体的には、支払不能や支払停止などの債務者の経済的状況の悪化や倒産手続きが開始された場合、解散などの法的な特例が発生した場合に期限の利益喪失が生じます。また、期限前の返済遅延や契約上の義務違反、取引実行前提条件の未充足なども喪失事由となる他、民法の契約自由の法則に基づく契約条項に違反する場合も期限の利益を喪失します。
具体的な喪失事由とその例
喪失事由としては、事由が発生した時点で直ちに債務者が期限の利益を喪失する当然喪失事由と事由発生後に債権者が債務者への請求を行った段階で、初めて債務者が期限の利益を喪失する請求喪失事由があります。
具体的には、当然喪失事由には以下のようなものがあります。
- 債務者の財務状況の悪化:
債務者が支払不能や支払停止の状態に陥った場合、期限の利益喪失が生じます。 - 倒産手続きの開始:
債務者が倒産手続きの申し立てを行った場合、期限の利益喪失が発生します。 - 解散などの特例:
債務者が法的な特例によって解散された場合、期限の利益喪失となります。 - 保全処分の実行:
滞納処分、強制執行」、仮差押え及び仮処分が明らかになった場合は期限の利益喪失を喪失します。
請求喪失事由には以下のようなものがあります。
- 返済遅延や契約上の義務違反:
債務者が支払期限日に返済遅延したり契約上の義務に違反した場合、期限の利益喪失が生じます。但し、個別クレジット(個別信用購入あっせん)及びクレジットカード(包括信用購入あっせん)等のクレジット契約の場合、期限の利益の喪失条件は、割賦販売法で「二十日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として、契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない。」と定められているため、支払いを怠ったために即時に契約を解除されたり、期限の利益を喪失することはありません。しかし、貸付金については、一般的に「1回でも支払いを怠った場合は期限の利益を失う。」とする契約上の失権条項があります。 - 取引実行前提条件の未充足:
契約が成立するための実行前提条件が満たされない場合、期限の利益喪失が発生します。
これらの喪失事由が生じた場合、債権者は期限前に全ての債務の履行を求めることができるようになります。
以上が期限の利益喪失とその事由についての説明になります。期限の利益喪失が生じた場合、債務者は喪失通知を受け取った際に適切な対応を取る必要があります。また、期限の利益喪失と債務不履行とは別の概念であることに注意しなければなりません。